雇用関連政策に対する雑感
以下の記事を読み、考えさせられることがあったので書いてみます。
日本で「社内失業」が大量発生するワケ | 高城幸司の会社の歩き方 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
この記事のポイントは「人材のミスマッチ」にありますが、
このようなミスマッチが生じるタイミングは2つあると考えています。
1. 採用時のミスマッチ
2. 社内での配置転換時のミスマッチ
それぞれのミスマッチの原因について、
人を動かす側、動かされる側に分けて考えてみると、
以下のようにまとめられると思います。
1. 採用時のミスマッチの原因
採用する側(動かす側):
ポジションを明確にした上で採用を行っていない。
採用される側(動かされる側):
自分に合っているかどうかも含めて、企業の業務内容を正しく理解できていない。
2. 社内での配置転換時のミスマッチの原因
転換する側(動かす側):
社員の適正を見て動かすのではなく、会社の都合で動かしている。
転換される側(動かされる側):
会社に残りたいがために、自分に合っていない職種でも受け入れてしまう。
それぞれのミスマッチに関する雑感を書くと、
採用時のミスマッチに関しては、ある程度仕方が無いことだと考えていて、
企業側も面接に来ている人間の適正を一発で見抜ける訳ではありませんし、
応募する側も事前に企業の業務内容を正しく理解することは難しいと思います。
採用後にお互いが歩み寄ることでwin-winな関係を築ける可能性もありますし、
ある程度のミスマッチが生じる前提で積極的に採用/求職活動を行うべきだと考えます。
一方、配置転換時のミスマッチに関しては改善の余地が大いにあると思っていますが、
その原因は企業側、社員側という問題ではなく、
法律が大きな障害となっていると考えています。
現在の労働契約法では、解雇濫用を防ぐ為に、
解雇時の取り決めに関して細かく規定されており、
企業の都合によって解雇をすることが難しい、という現状があります。
会社は簡単に社員を解雇できない?解雇について教えて! - 法律Q&A - 弁護士ドットコム
個人的には、この法律は時代遅れだと感じていて、
今の社会状況、経済状況の変化に対応できていないと思っています。
企業は当然、社員を守る義務はあるのですが、
社員の採用時に行っていた業務が無くなった場合に、
その業務を行っていた社員を雇用し続けなければいけない、
というのは、なかなか企業にとってはハードルが高いと思います。
そのハードルを下げるための仕組みとして、派遣社員という概念がありますが、
企業が正社員を守った結果、
社員と同等の仕事をしている派遣社員を守らない(守れない)、
という問題が起こっています。
これは、会社、正社員、派遣社員の誰が悪いというものでは無く、
経済合理性を追求した結果、仕方なく生じている問題だと考えています。
僕はこの問題の中心は正社員の保護があると考えていて、
もっと人材流動性を高めることが必要だと思っています。
正社員保護のレベルを下げる = どんどんリストラが起こり失業者が増える、
と考える人がいるかもしれませんが、
人材流動性が高まるということは採用も柔軟になるため、
ある会社を辞めた後に、次の会社に入りやすくなることを意味するので、
必ずしも失業者が増えることにはならないのではないでしょうか。
今の状況を整理すると、以下のようになります。
会社:
一度採用すると辞めさせることが難しいため、
積極的な正社員の採用をせず、派遣社員の流動性を利用して人材確保を進める。
また、既に採用した人材については、必ずしも業務の適正が無い場合でも、
社内で雇用しつづける必要がある。
正社員:
今の会社を辞めると次の仕事は見つかりにくいため、
会社に残ることを最優先に考え、仕事への適正やモチベーションは二の次になる。
契約社員:
会社の状況や経済状況によって雇用が左右されるため、安定的に仕事を確保できない。
雇用されている時も正社員よりも待遇が悪い。
人材流動性を高めると全員が契約社員のような扱いになるのではないか、
という議論もありますが、実際はそのようにはならないと思います。
というのも、先日話題になったすき家のアルバイト問題にもある通り、
雇用する側が一方的な力を持っているわけではなく、
雇用される側にも大きな力があり、不当な労働条件には従わない自由があります。
労働条件は企業と労働者の需給バランスによって決まるため、
流動性の増加に伴って、今の正社員/派遣社員のような対立が解消され、
より幅を持った自由な労働環境が生まれると考えています。
ただし、注意するべき点として、人材のグローバル化による影響があります。
もし日本人が受け入れられないような低賃金の仕事があった場合でも、
他国から来た人からすれば受け入れられる条件である可能性はあります。
この可能性を問題視して、
人材の流動化、及びグローバル化はけしからん、賃金の低下を後押しするだけだ、
と主張している人もいます。
第247回 一貫して間違っている安倍政権の労働政策(2/3) | 三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」 | Klugクルーク - FX投資家向けの為替ニュース・相場コラム・経済指標カレンダー
しかし、僕の考えは、
日本人はそのような低賃金の労働を受け入れている場合ではなく、
より付加価値の高い、創造的な仕事に従事しなければいけない、というものです。
教育水準が高く、成熟した国である日本は、
単純労働や肉体労働の雇用を守ることに力を入れるのではなく、
IT、金融、教育などの、付加価値の高いサービス業にこそ力を入れるべきだと思います。
また、前述の三橋氏の主張では、
人材の流動化によって、土木/建設の雇用が日本人から奪われる、とされていますが、
もし、日本国民がそれらの雇用は日本人にやってもらいたい、と考えるのであれば、
付加価値の高い仕事を高賃金で日本人が請け負えば良いだけだと考えます。
外国人を締め出すことで日本人の雇用を守る、という姿勢は、
サービスと賃金のバランスを崩すだけだと思っています。
既に、介護の分野では日本人の働き手がいないため、
外国人労働者に頼らざるを得ない現状があります。
もし日本人による介護サービスを希望するのであれば、
日本人にしかできないような高付加価値なサービス(それがあるかどうか知りませんが)
を提供し、高い賃金を支払うことでしか、日本人の雇用は確保できないと思います。
長々と書いてきましたが、雇用流動性に関する問題というのは、
日本が今後注力するべき業種/職種の選択の問題であり、
また、世界の中で日本人がどのような価値を提供する国民であるのか、
という本質的な問いに端を発しています。
雇用の流動化は、短期的には国全体にストレスがかかると思いますが、
長期的に見ると必要なことだと思います。
(今後、日本が鎖国して国内だけで全てを賄うのであれば話は別ですが。)
そのような変化に対して僕たちが取るべき行動は、
複数の分野に対して高い専門性を持つようにして、
社会から必要とされる人材になるための努力を続けることだと考えます。
そういう意味では、
社会から必要とされる人は収入が増加する一方で、
努力をしたくない人や、現状に甘んじている人にとっては、
大変な時代になると言えそうです。
努力を始めるのに遅いと言うことは無いので、
そのような時代に備えて、準備をするべきだと思います。
それでは。