遺伝子検査キットに対する懸念
先日、Yahooが遺伝子検査サービスを提供することが発表されました。
203遺伝子・70項目に対応する遺伝子検査キット「GeneLife ZERO」、3月1日より「Yahoo!ヘルスケア」で取り扱い開始 / プレスルーム - ヤフー株式会社
Yahooに先行する形で、いくつかの会社が遺伝子検査サービスを提供しており、
ここ2〜3年で遺伝子検査に関する環境は劇的に変わりそうですね。
有名なところだと、
東大大学院出身者によるベンチャー企業であるGene Questや、
ソーシャルゲームで有名なDeNAもMYCODEという名前でサービスを提供しています。
また、DHCも肥満関連遺伝子に特化した形でサービスを提供しているみたいです。
(参考:遺伝子検査ならDHC)
自分自身の遺伝子を自らの判断で検査することについては僕は賛成です。
自分の体質の理解にも繋がりますし、
将来的に防ぐことのできる病気を見つけられる可能性もあるため、
メリットは大きいと思います。
その一方で、個人的には2つ懸念していることがあります。
1つ目は、サービスを受ける側の生物学的なリテラシーの問題です。
遺伝子検査の結果についてある程度、正しく理解することができると思っていますが、
このようなバックグランドが無い人が、
遺伝子検査の結果をどのように受け止めるのか、ということについて懸念があります。
一卵性双生児を見ても分かる通り、
遺伝子的には全く同じヒト同士であっても、同一の人物になるわけではありません。
そのため、遺伝性疾患などの場合は高い確率で予測することが可能かもしれませんが、
その他の病気について遺伝子から発症を予測することはかなり難しいのではないか、
と個人的には考えています。
遺伝子によって個人の病気や傾向を判断することについて、
多くの人はどのように受け止めるのでしょうか。
2つ目の懸念は、生命保険等の他のサービスや世の中に与える影響です。
安価で簡単に遺伝子検査ができるようになると、保険への加入条件として、
遺伝子検査データの提出を義務づける会社が出てくることが予想されます。
その場合、本人は遺伝子検査を受けたくないのに、
保険に入るために半ば強制的に受けるケースが出てくるかもしれません。
知りたくないならデータを提供するだけにして、検査結果を見なければ良い、
という主張もあると思いますが、
遺伝子検査の結果を見た保険会社がその人の加入を拒否した場合に、
本人は意図せずに(間接的に)結果を知ってしまう可能性があります。
遺伝子検査が一般化すると、
保険に限らず、様々な場面において、その結果データが利用される可能性がありますが、
自分の遺伝子について知らない権利をどのように守るのか、
ということに懸念を持っています。
基本的には自分の遺伝子を自分で調べるケースが多いと思うので、
前述の懸念は杞憂かもしれませんが、
新しいサービスが世の中に与える影響については良く考える必要があると思います。
それでは。
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