orangeKid's blog

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【書籍】彼女たちの売春(ワリキリ)

 

GW中は本の読みだめをしています。

読んだ本の中で面白かった本についてはブログで紹介していきたいと思います。

 

まずは第一冊目として、荻上チキさんの書籍「彼女たちの売春(ワリキリ)

を紹介します。

 

荻上チキさんはニュースサイト「シノドス」の編集長を務めている傍ら、

朝まで生テレビ」や「ニッポンのジレンマ」等のテレビ番組にも出ており、

新しい世代の論客として注目されており、僕の好きな評論家の1人です。

 

この本は、売春をしている女性へのインタビューの内容を中心に書かれており、

それに加えて、荻上さんの考えや統計データ等の情報が記載されています。

 

以下、引用部分は本書からの引用になります。

 

彼女たちの売春(ワリキリ)

彼女たちの売春(ワリキリ)

 

 

 

僕自身、出会い喫茶などの業態があることは知っていましたし、

出会い系サイト等を通じて売春をしている人がいることは理解しているつもりでしたが、

チキさんが踏み込んで取材した内容を読んでかなり衝撃を受けました。

 

売春というと皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。

 

本の中に書かれていますが、

今の日本での売春を行う人のイメージは以下のようなものだと思います。

 

かつての日本や後進国での売春は、「そうせざるを得ない環境があった」がゆえに同上されるべきだが、今の日本はすでに豊かな先進国のはずなのだから、それでも困難な状況に置かれているという者は、どこかで甘えているような例外的な人物、となるわけだ。

 

本人の努力次第で環境は変えられるし、貧困からも抜けられる、

と主張する人がいますが、僕はそうは思わないし、

この本を読んでその思いはより強くなりました。

 

イケダハヤトさんも書いている通り、

僕らは恵まれているから、努力が報われる世界にいるのだと思います。

「努力できる」あなたは、とっても恵まれているんですよ : イケハヤ書店 by @IHayato

 

売春をしている女性の話を聞いていると、

幼少期、学生時代に受けられるべき愛情や支援を受けることができず、

その結果、自己肯定感が得にくくなり、

学業や仕事からドロップアウトしてしまう現実が浮き上がってきます。

 

また、生活保護をはじめとしたセーフティネットについても、

受給していることの後ろめたさから、利用を躊躇してしまうケースもあるようです。

 

もちろん、個人によって置かれている状況は異なりますが、

困っていることに変わりはありません。

 

困っている人が多く存在することがわかれば、僕たちは「個人問題を社会問題化」する必要がある。複数の当事者がいて、似たような問題にぶつかっているのであれば、それを再生産する仕組みがどこかにあるのだろうから、個人の問題として切り捨てるのではなく、何かしらの対処策と、困難と向き合っている人への処方箋を用意しなくてはならない。

 だがその際、僕たちは常に逆向きの力も同時に経験する。それは、「社会問題を個人問題化」しようとする力だ。そんなのは社会問題ではない、あくまで個人の失敗事例にすぎないと、解決のための議論に水を差すような言葉の数々だ。

 

生活保護やシングルマザーの問題を考える時に常に出てくる言葉が、

「自己責任」という言葉です。

 

本来は社会全体で取り組む必要のある問題にも関わらず、

個人の努力不足であり、責任である、と考えたい人が多いようです。

 

このような姿勢で取り組んでいる限り、それらの問題は解決されないように思います。

 

 

アウトサイドで生き延びようとすること自体が、非道徳的なのだ

という表現からも分かる通り、

日本は、普通と思われているのルート(学歴、職歴)から外れてしまうと、

そこに復帰することが非常に困難な国だと思います。

 

売春をする女性の中には、搾取と貧困という負のサイクルから抜け出す方法として、

仕方なく売春をしている人も多いようですが、なかなか抜け出せないとのことです。

(具体的な例が本の中に書かれています。)

 

彼氏に秘密で、誰にも言わず、自分を責めながら、必要なお金が稼げるまでワリキリを続けているという話を聞くと、「売春婦には道徳が欠如している」といったたぐいの議論の空虚さを痛感する。 

 

売春という問題を個人の問題として考えている限り、解決することは難しいと思います。

 

これは社会福祉の問題であり、

決して個人で解決できる類いの問題では無いことを改めて感じました。

 

 

特定の引力を批判する者は、同時に斥力への対処を行わなければ、それはただ、他人の人生を採点してみせる作業に興じているだけだ。  

 

売春については様々な立場から批判することが可能だと思いますが、

本当に彼女たちの置かれている状況を考えたら、

安易に批判することはできないのではないでしょうか。

 

 

また、彼女たちが売春をしなければいけないのは、

ある意味では社会福祉の敗北でもあります。

 

またまたイケダハヤト氏の記事を引用しますが、このような反社会的な業者の方が、

彼女たちが本当に必要としているサービスを提供している、という実態があります。

 

貧困女性のセーフティーネットとなる「風俗産業」。宿・食事・託児所付きの風俗店が増えている : イケハヤ書店 by @IHayato

 

彼女たちを公的なサービスによって救うことができていないことは大きな問題です。

 

読後は、少し憂鬱な気分になると思いますが、

売春は日本が抱えている問題を端的に表しており、

この本はその実態を理解する上で良書だと思いました。

 

是非、読んでみて下さい。

 

それでは。